こんにちは、院長の野田です。
先日の患者さんとの会話でこんなのがありました。
患「先生、私の両足の長さって揃ってますか?」
僕「え?そうですね……(チェックしながら)特に左右差はないですね、問題ないですよ」
患「そうですか、よかった!」
僕「どうかしました?」
患「ええ、地元の友達がちょうど私と同じくらいに出産して、その子も骨盤矯正に行ってるそうなんですけど、骨盤がゆがんでるから足の長さが左右で違ってるって毎回言われて、いつもそれを直してもらってるらしいんですけど、もう10回くらい通ってるのに腰の痛みも全然治らなくって、どうしたらいいのかなって話していて」
僕「……」
患「先生は私の足の長さなんてチェックしたことないじゃないですか」
僕「ええ、まあ」
患「でも私は腰痛もすっかり良くなって、体もすごく楽になったから、その友達がかわいそうに思えてきちゃって。ここの院を紹介してあげたいくらいなんですけど、地元の友達だから通えないし……どうしたらいいですかねー」
どうしたらいいですかねー、ということですが、
はい、残念ですがそこの院には通うの止めた方がいいと思います。
よその院で何をやってるのかは知らないし、内容も知らないのに一方的に批判するつもりもありません。
しかし10回も通ってその対応だったら、おそらく11回目に劇的な改善が待っているとは考えられませんよね?
おそらくその調子であれば、いつになってもその友人の不調が改善することはないでしょう。
足の長さの違い=骨盤のゆがみ?
そもそも脚の長さの違い=骨盤のゆがみ、という公式を産後のボディケアに結びつけていることが問題だったりします。
骨盤の変位が脚長差(足の長さの違い)に出る、という考え方自体は確かに間違ってはいません。
しかし、足の長さの違いが全て骨盤の変位に起因してるわけではない、ということを見落として語られているケースがあまりにも多いです。
仮にその脚長差が骨盤の変位に起因しているとしても、その骨盤の変位というのは日頃の体の使い方などの様々な原因が積み重なった結果として発生しているわけです。
だから足の長さだけちゃっちゃっと修正して揃えたって、それはただのその場しのぎの修正にしかなりません。
本質的な部分が改善されていない以上、また脚長差は発生してきます。
だから10回も通っても何も変わらない、という悲劇が生まれるわけです。
仮にセラピストが本気で脚長差を改善しようと思うのだったら、そのクライアントの日頃の姿勢やら癖やら生活習慣やらをしっかり把握して、全身の筋肉のアンバランスの状態をチェックして、そこのバランスを改善していくような施術をおこなわなければいけません。
それがきちんとできていれば脚長差なんて自ずと正しいポジションに納まってきますし、そもそもクライアントの脚長差を意識する必要すらなくなってくるのではないでしょうか。
(様々な意見があるとは思いますが、少なくとも僕はそう考えています。だから僕はクライアントの脚長差はチェックしません)
誰のための施術であるのか?を真剣に考える
もちろん、整体院の中には脚長差を揃えることをメインで営業している院も沢山あると思います。
そしてそれらの院もしっかりした結果を出しているのでしょうから、脚長差にこだわること自体が悪いというつもりはありません。
しかし曲がりなりにも、10回も施術をしているにも関わらずクライアントが満足する結果には何一つ繋がっていないのならば、少なくともそのクライアントに対してはその施術スタイルは適性があるとはいえないのではないでしょうか?
適性がないのであれば、我々治療家は一つのテクニックに固執することなくクライアントのために施術の方向性を変えるべきなのではないでしょうか?
我々プロは限られた回数で結果を出さなければいけないのですから、結果を無視して意固地に自分の流儀を貫き通すことは美徳であるとは思えません。
例えばそれが無料体験などによる検証期間であるならば、自分が納得できるまで好きなだけ繰り返せばいいでしょう。
しかし実際の治療院ではクライアントはお金を払ってくれています。
しかも国民健康保険制度の敷かれている日本であるにも関わらず、1回数千円もの自費治療費として私たちの施術を選択してくれているわけです。
自分の流儀を貫くだけのそのスタンスは、そのようなクライアントからの信頼に応えていると言えるのでしょうか?
産後の女性のボディケアに関しては脚長差を揃えることより優先して取り組むべきことがたくさんあります。
脚長差というのは確かに指標としては簡単でわかりやすいし、クライアントさんにも「骨盤がズレて足の長さが違っているのを揃えます」というのはインパクトがあるので説明に使いやすいとも言えます。
しかしそれ故に整体業界、というかいわゆる骨盤矯正業界では脚長差は指標の一つとして重用されるあまり、骨盤矯正=足の長さを揃える、みたいな考え方が一人歩きしているのもまた真実であったりもします。
でもその使い勝手の良さに甘んじてそればかりに注力し、結果として本質的な改善につながらないのであれば意味がありません。
意味がないどころか、できもしないことをできると言い、出来てもいないことを出来たと言ってクライアントに金銭的身体的負担をかけ続けることになるのであれば、それは整体業界を貶める行為であって、まわりまわって最終的には自分の首を絞めるだけではないでしょうか。
クライアントの真剣さに応えられる施術者であるために
と、いうわけで、
自分の得意なテクニックだけで全ての症例を改善できると考えるのはもうそろそろ止めませんか?
何度も言いますが、決して脚長差を揃える整体それ自体を否定しているわけではないです。
しかし物事には適切な手順があり、全てのパターンが全ての症例に当てはまることはないということが言いたいのです。
一生懸命どれだけ足の長さを揃えたって、それだけでは産後の女性の身体が元に戻ることはありません。
百歩譲って何かしらの効果があるのだとしても、少なくともそれは産後の女性に対して優先順位の高い施術ではない、他に優先してやるべき、改善していくべきことはいくつもあります。
[blogcard url=”https://noda-chiro.jp/course-afterbirth/”]
詳細は上記の記事を参照していただけたらと思いますが、あくまでも正しい知識と正しい技術を持って、確実に結果に繋がる施術をクライアントに対して提供するのがプロとしての使命なのではないでしょうか?
おそらく世の全ての職業を鑑みても、このようなことは当たり前のことだと思います。
でもその当たり前のことができていないというのであれば、我々は自分達の仕事に対する立ち位置をもう一度見つめ直す必要があるのではないでしょうか。
いつだってクライアントは真剣です。
もちろん我々整体師だって真剣であるとは思います。
しかしその真剣さとクラアントの真剣さは、本当に同じ方向を向いていますか?
残念ながらその真剣さが別のベクトルに向かっていることはありませんか?
クライアントの思いに対して、きちんと結果を出して還元していくために。
せっかく身につけた技術は果たして誰のためのものなのか、今一度考え直してみるべきではないでしょうか。
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