椎間板ヘルニアが腰痛の原因ではないように、骨盤のゆがみや開きが産後女性のトラブルの原因ではない、という話

産後のボディケア

産後のトラブルは骨盤の歪みが原因ではない

 

かつてないほど長いタイトルですね(笑)

こんにちは、院長の野田です。

少し前の記事になりますが、プレジデントオンラインに興味深い記事が掲載されていました。

 

[blogcard url=”http://president.jp/articles/-/22463″]

 

執筆されたのは伊藤かよこ先生という鍼灸師の方で「人生を変える幸せの腰痛学校」という本も上梓されている先生です。

直接お会いしたことはないのですが、Facebookで何度かやり取りをさせていただいたことがあります。

柔らかい表現の中にも寸鉄人を穿つ鋭さのある文章を書かれる方です。

 

詳細はリンク先の記事を読んでいただきたいのですが、この記事を読んだ時に僕が思ったのは、

「腰痛とヘルニアの関係」は、いわゆる「“産後女性の悩み”と“骨盤のゆがみや開き”の関係」にとても似ているということです。

 

例えば、以下の引用の部分。

 

古くて間違った知識を患者さんに説明し、本に書き、中にはテレビでしゃべる医師もいるのだから。患者さんがその医師の言葉を信じてしまうのは無理もない。そうして、本当の原因ではない「ヘルニア」を腰痛の原因だと思い込まされた患者さんが、今日もまた増え続けているというわけ。

“センセイ”である医師から「椎間板ヘルニア」と診断された患者さんは、当然つねに腰に注意をむけ、四六時中腰のことを心配しながら生活することになる。すると、ますます「痛み」に敏感になり、負のスパイラルが永遠に繰り返されることになる。

ほとんどの椎間板ヘルニアは腰痛と無関係|プレジデントオンライン より引用

 

これって前提となるケースは違えど、まさに産後の骨盤矯正を謳っている我々の業界も同じことが言えると思います。

 

先日リライトした産後のボディケアコースのページにも詳細を記載したのですが、出産の際に赤ちゃんが骨盤を通り抜けたからといって、目で見て分かるほどの形状の変化を伴って骨盤が開きっぱなしになるということはありません

[blogcard url=”https://noda-chiro.jp/course-afterbirth”]

それが現代医学における一般的な見解ですし、そもそも基礎的な解剖学を正しく学んだセラピストであれば常識の範囲で想像できることです。

 

しかし「産後 骨盤矯正」などのキーワードで検索してみると、

  • 産後の女性の骨盤は開いたままで、骨盤を矯正して締めなければ元に戻らない。
  • 産後に骨盤を閉じないと、大きいお尻のままで下半身太りの原因となる。
  • 産前のジーンズが履けなくなったり、ポッコリお腹が戻らないのは骨盤の開きが原因。
  • 腰痛、恥骨痛、尾骨痛の原因は産後の骨盤が開いているから。

などといったような、産後の女性の不安を煽り立てるような文章で溢れています。

 

妊娠〜出産を経て、女性の体は大きく変化します。

体重が増えたり、お尻が大きく見えたり、お腹の皮が伸びてたるんでしまったり・・・

大きくなったお腹を支えていたのだから仕方ないとはいえ、それはおそらく女性にとって歓迎できない変化であることは想像に難くはありません。

「このまま元に戻らなかったらどうしよう・・・」

産後のママさんであれば、誰しもこのような不安を抱くのではないでしょうか。

 

そのような時に、上記のような不安を煽り立てるような文章ばかりを目にしたら、どうなるでしょうか?

不安にとらわれたママさんはネガティブな心情に囚われ、自分に自信を失い、明るい気持ちで産後の毎日を過ごすことができなくなるかもしれません。

整体に通わなくては開いた骨盤を閉じることができず、自分の体は元に戻らない」と思い込んでしまうことで、基本的なエクササイズなどの自分自身でできる改善のための努力すら放棄してしまうかもしれません。

 

「顔色、悪いよ」

人は、だれか3人からこう言われただけで、具合が悪くなるといわれている。これはノーシーボとよばれる「マイナスの暗示」効果だ。

わかりやすくいえば、現代の「呪い」である。

ほとんどの椎間板ヘルニアは腰痛と無関係|プレジデントオンライン より引用

 

産後のママさんがあらゆる所で幾重にも目にするであろう、「産後のトラブルは骨盤のゆがみが原因」という文言。

それはまさに伊藤先生仰るところの「呪い」となり、明るいはずの産後の毎日に暗い影を落とす引き金になるのではないでしょうか。

そしてそのような「呪い」をかけているのは、無責任に間違った情報を発信し続けている一部のセラピストなのです。

 

日本の腰痛治療の現場では、患者さんだけではなく、医師も治療者も「呪い」にかかっていることが驚くほど多い。

ほとんどの椎間板ヘルニアは腰痛と無関係|プレジデントオンライン より引用

 

そう。

「産後女性のトラブルは骨盤が開きっぱなしになるからで、骨盤矯正で閉じなければ解決できない」という呪いに囚われているのは、他ならぬ我々セラピスト側なのかもしれません。

妊娠中から出産後にかけての、女性の体の変化のプロセスについて、一般的な整体学校やスクールではほぼ教わることはありません。

当院では2009年から産前産後の整体テクニックを学ぶための「アラウンドバースボディケア・スクール」を開講していますが、

[blogcard url=”http://aroundbirth.net”]

そのような専門的に学ぶことのできる環境は、まだまだこの業界には少ないのが現状です。

そのため産前産後の整体を新しく取り入れるセラピストの先生の中でも、固定観念や先入観のあるまま見よう見まねで、浅い独学で施術を始めてしまい、そのような「呪い」にかかっていることは十分に考えられます。

まずは私たちセラピストが正しい知識を身につけ、そのような呪いを解くことから始める必要があるのではないでしょうか。

 

何れにしても、医学的にも全く根拠のない「出産後の骨盤が開いたままで、それがトラブルの原因である」という情報をいたずらに発信し、相手のコンプレックスに訴えかけて不安を煽りたてるような、この恥ずべき現状を私たちはもっと真剣に変えていかなくてはいけないと思います。

 

産後ママさんを「呪い」から解き放ち、笑顔と自信と希望に満ちた子育てを楽しんでもらうために。

私たちセラピストだからこそできる、そして私たちだからこそ前向きに取り組まなければいけないことが、もっとたくさんあるのではないでしょうか。

 

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