こんにちは、院長の三橋です。
妊娠出産を経験したことで、大きく体質が変わってしまったというケースが多く見受けられます。
体質といっても体重やむくみなどといったボディラインの問題はもちろんのこと、体力や筋力の低下など多岐にわたり、それこそただ立っていたり座っているだけでも疲れてしまうようになってしまう方も珍しくありません。
実際、当院の産後のボディケアコースにいらっしゃる産後女性の方たちからも、「疲労が抜けない」、「すぐに腰が痛くなってしまう」といった声をよくお聞きします。
それこそ何でもない、ただ立っていたり、座っているだけで疲れてしまうようになってしまうなんて不思議だとは思いませんか?
姿勢を保持するために働く、抗重力筋(こうじゅうりょくきん)という筋肉の存在
唐突ですが、抗重力筋(こうじゅうりょくきん)という筋肉の存在をご存知でしょうか?
抗重力筋とは「地球の重力に対して姿勢を保持するように働く筋肉」のことで、人間の身体には頭から足先にまで(ふくらはぎ・太もも・お尻・腹筋・背筋・首など)、全身に渡って身体の前後に(おなか側と背中側に)バランスを取るように支え合う筋肉が存在することで、倒れずに姿勢を保ち続けることが可能となっています。
つまり、重い頭を身体の前後で(おなか側と背中側で)相反する働きをする筋肉が互いに伸び縮みをしながらバランスを取ることで、立ち姿勢も座り姿勢も成立させているのです。
特に動作らしい動作をしなくとも、立っていたり座っていたりするだけで身体が疲れてしまうのは、こういった抗重力筋が無意識のうちに働いているからであったのです。
余談ですが、宇宙飛行士が地球に帰還してから真っ先に取り組むのが、こういった抗重力筋のリハビリなのだとか。
「生理的に正しい姿勢」とは、姿勢と抗重力筋との関係について
ところで、抗重力筋の負担については、もちろん個人差も出てきます。
一般的に云う「姿勢が悪い人ほど肩や首が凝りやすい」というのは本当で、これについては「重い頭をいかにスマートに支え切るか」という観点から考えてみると分かりやすいかと思います。
人体の中でいちばん重いパーツである頭をきちんと骨盤の真上に持っていければ抗重力筋の負担が最小限に抑えることができ、逆に背筋が丸まり、頭が肩よりも前に先行すればするほど今度は抗重力筋の負担が増すことになる訳です。
なお姿勢については、実はプライムラインという考え方があり、人体を真横から眺めて、耳穴、肩、大転子、膝、くるぶしが縦に一直線上に並んだ姿勢が理想な姿勢、つまり最も抗重力筋に負担を掛けない姿勢であると言われています。
これを当院では「生理的に正しい姿勢」と呼んでいます。
つまりは「生理的に正しい姿勢」とは、本来もっとも疲れにくい(抗重力筋に負担を掛けない)姿勢なのであり、「視覚的に正しい姿勢」とは分けて考えるべきであるのです。
なお、「視覚的に正しい姿勢」とは、礼法マナーなどを一般に他者からみて不快を与えない姿勢なのであって、それは必ずしも疲労しにくい姿勢という訳ではないことから両者の本質の違いを理解して頂けるかと思います。
産後女性が疲れやすくなってしまうひとつの原因として考えると
それでは多くの産後女性が抱えることになる「疲労が抜けない」、「すぐに腰が痛くなってしまう」といった違和感や不調を改善するにあたって、プライムラインに従って姿勢を矯正すれば直ちに解決してしまうものなのでしょうか?
実は当院では、そういった考え方には立っていません。
例えば、新規で来院されたすべてクライアントさんに画一的にプライムラインに従って姿勢の矯正、レクチャーをしたところで、おそらくは余計に背中や腰が張ってしまうようになってしまうだけでしょう。
そもそも他者に強制された姿勢というものは違和感を感じてしまうもの。
物理的に有利な姿勢であるはずなのに、不思議な話ですよね。
その理由は、すべての産後女性のボディコンディションがそれぞれに異なるものだから。
もっと具体的に説明させて頂くと、日常の姿勢や歩き方などといった身のこなしによる影響で、皆さんそれぞれに硬くしてしまっている筋肉やパフォーマンスを低下させてしまっている筋肉が異なってくるからであるのです。
例えば、妊娠中のいわゆる「反り腰」の影響が強く残り、太ももやふくらはぎといった筋肉が硬く短縮してしまっているような状態にまだあるような方にプライムラインを強要したところで、おそらくご本人は強烈な違和感を感じてしまうことになるでしょう。
十分に太ももやふくらはぎの状態が上がるまでは、そういった筋肉に過度にストレスを与えないなかで抗重力筋に最も負担を掛けない姿勢を探るべきであるのです。
産後女性一人ひとり、それぞれの筋肉の状態に合わせたベストな姿勢を探ることが大切なのであり、間違っても十把一絡げに機械的に単一の基準で押し付けるものではないのです。
そして、「生理的に正しい姿勢」とは本来、体に本能的に備わっているものであると当院では考えます。
骨格を支えるインナーマッスルがきちんと機能できる状態にあれば、本人の意思とは関係なく、体の方から勝手に「生理的に正しい姿勢」、つまりは現状における最も疲れない姿勢を再現してくれるはずであるのです。
だから当院のクライアントさんたちには現在、基本的に姿勢の指導、レクチャーは行っておりません。
骨盤軸整体を受ければ、自動的に姿勢の方から良くなってしまうのですから。
そうすれば妊娠中の女性にとっての「生理的に正しい姿勢」もおのずと見えて来るはずで、いわば不可抗力という言葉で片付けられてしまいがちな妊婦さんたちの不調や違和感も根本的な解決が目指せるということになります。
コメント