こんにちは、院長の三橋です。
今や女性客をターゲットとする整体カイロプラクティック院を運営する上で、決して外せないキーワードとなってくるのが「骨盤矯正」でしょう。
妊娠出産、産後ケアをメインに据える整体カイロプラクティックはともかく、そうでない一般の女性の方々にも生理痛、手足の冷え、肩こり腰痛、さらには太りやすさの原因を「骨盤の歪み」や「骨盤の開き」に求めることが一般的になりつつあるからです。
そういうこともあって、多くの女性が実際に整体カイロプラクティックを選ぶにあたって、「骨盤矯正」をキーワードに検索されることと思います。
でも、果たして本当にその不調や悩みの原因は骨盤にあるものなのでしょうか?
解剖学的に骨盤が開くことは、まずありえない
そもそも、骨盤のもつ「上半身の重さと左右のバランスを引き受ける」という役割を考えると、骨盤がそう簡単に開閉することがあり得ないことはお分かり頂けるはずです。
実際には、骨盤は恥骨結合と左右の仙腸関節とよばれる関節部分で「3点結合」をなしています。
しかし、恥骨結合とよばれる部分は「関節」とは名ばかりで、ほとんど動くことはありません。
いっぽう左右の仙腸関節は、ほんの「数ミリ程度」は動くものとされていますが、股関節の動きの補助や骨格の左右バランスの補正をするくらいのもの。
あくまで「数ミリ程度」であるので、お尻のシルエットを変えてしまうほどの変化を骨盤に与えることは、まず考えにくいのです。
なお出産後のお尻の形状変化(いわゆる骨盤が開いたように見える状態)については当院では、骨盤が開いたからではなく、股関節のアライメントの変化によるものとして捉えています。
実際には、お尻のシルエットの変化はもちろん、ズボンが引っかかってしまう原因は、大腿骨大転子(太ももの骨上部の出っ張り)にあると考えるのです。
便宜的に「骨盤を締める」という表現を使うことはある
骨盤にまつわる様々な悩みや症状を抱えて来院されてくる女性クライアントさんたち。
それが、もし先述したようなお尻のシルエットやボディラインについての悩みでしたら、それを改善させていくことを指して便宜的に「骨盤を締める」という表現を使うことはあります。
目標を非常にイメージして頂きやすい言葉だからです。
だからといって、矯正器具を使ったり、バキバキと関節操作をおこなったりするなど、物理的に骨盤を締めるようなアプローチをすることはありません。
骨盤は、その程度の外力によってそう簡単に動かせるものではないからで、もし仮に動かせたとしても数時間も経てば元通り戻ってしまっていることでしょう。
骨盤の形を変えてしまった原因がそれまでの生活習慣にある以上は、仮に矯正に成功したとしても、ふたたび元の生活に戻ることで開いていってしまうはずだからです。
関節を動かしたり、支えたりするのはあくまで筋肉です。
だから、筋肉の使い方や生活習慣を見直すこと以外に根本的な解決策はないはずであると当院は考えるのです。
手足の冷え、基礎代謝の低下の原因を骨盤の歪みや開きに求めるのは無理がある
ところで昨今、手足の冷えやむくみ、基礎代謝の低下(太りやすさ)の原因を骨盤の開きや歪みに求める記述が多く目につきます。
多くの論拠はというと、骨盤が開いて内臓が下垂してしまうことで臓器の機能が低下し、基礎代謝の低下や血行不良を招くからといったところでしょうか。
しかし、臓器の位置決めをしているのも筋肉であり、血流を支えているのもまた筋肉なのであります。
極論を言わして頂くと、骨盤を動かしたところで果たして筋肉のパフォーマンスまで変えてしまうことが出来るのでしょうか?
これは考え方としては逆なのであり、筋肉のパフォーマンス低下が骨盤を含むお尻や股関節全体のアウトラインを歪めてしまっていると考えるべきなのです。
そして、筋肉のパフォーマンス低下、つまり骨盤が開いたように見せてしまう原因を当院では「体幹バランス」の低下にあると考えるのです。
つまり、骨盤が歪むことで全身のバランスに影響を及ぼすのではなく、全身の筋肉のパフォーマンス(体幹バランス)の低下がお尻まわり(骨盤)のシルエットの変化や骨盤あたりの痛みとして影響を与えるということ。
骨盤まわりの形状変化は、あくまで「結果」のひとつに過ぎないということです。
まず骨盤ありきで考えることは本末転倒なのであると考える訳です。
女性客を取り込むための骨盤矯正ビジネスにご注意を
実は当院では「骨盤矯正」という言葉をメニューから外してしまっています。
それは先述したとおり、産前産後ケアの本質を考えたとき、まず骨盤ありきで考えてしまうと矛盾が生じてしまうからです。
つまり、骨盤まわりの形状変化は「原因」ではなく、あくまで「結果」に過ぎない以上は、たとえ骨盤そのものを矯正したところで問題の解決には至らない訳です。
産前産後ケアの専門院としてリニューアルさせて頂いた時点で、メニューから「産後の骨盤矯正コース」をなくして新たに「産後のボディケアコース」を掲げた理由はそこにあったのです。
また、同様に産前産後ケアの本質考えると、骨盤ベルトの装着も本来の趣旨を考え直さなければならないものとなってきます。
あくまで関節をはじめ骨格を支えているのは筋肉です。
いくら骨盤ベルトで強く締め上げたところで、骨盤が締まらないことについては論を待たないものかと。
果たして本当にその不調や悩みの原因は骨盤にあるものなのでしょうか?
女性客を取り込むための骨盤矯正ビジネスにどうぞご注意を。
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