こんにちは、院長の三橋です。
妊娠出産を経た女性が「決定的に出来なくなってしまうこと」の代表格がいわゆる腹筋運動(上体起こし)ではないでしょうか?
多くの女性が妊娠出産をすると、それこそただの一回も腹筋運動が出来なくなってしまうのです。
そして、この事実が本質的な産後ケア、産後の骨盤矯正を考えるとき、産後女性の体に実際に起きている具体的な変化を知る手がかりのひとつになろうかと考えるのです。
なぜ産後ケア、産後の骨盤矯正をするべきなのか?
それは少なくとも「出産で開いた骨盤を閉める」などという抽象的な話では説明できないものであるのです。
出産後に力が入りにくくなり、骨盤があたかも開いてしまったように感じてしまう原因
妊娠出産を経て、女性の体には実際にどのような変化が起こるものなのでしょうか?
まず出産直後にほとんどの方が実感することになるのが、全身に力がぜんぜん入らなくなってしまう現象。
出産後1週間ほどは、ベッドから起き上がるだけでも一大事。
さらには歩くこともおぼつかなく、それこそ立っているだけでも一苦労。
重いものを持つことも困難であり、無理しようものなら尿もれしてしまうなんてことも。
そして、何より辛いのがボディラインの崩れ。
こういった状況を一般的に「骨盤が開いた」状態と感じるようで、整体カイロプラクティック院も「骨盤が開いた」ままだと様々な不調を抱えることになると喧伝するのです。
だけど、これら不調の本当の原因は別の所にあるのです。
産後女性が抱えてしまう多くの不調やトラブルの本当の原因とは
妊娠出産を経て、産後女性がさまざまな不調やトラブルを抱えるようになってしまう原因を当院では主に以下のふたつであると考えます。
- 妊娠出産という一連の過程で生じてしまう筋肉の混乱(重心の揺り戻し)
- 体幹の中枢部分を担うインナーユニットの機能低下
まず1については妊娠中に腹部が大きく膨らみ、ボディバランスが大きく変化する過程で生じてしまう、全身の筋肉の機能低下ということになります。
それこそ10か月かけてお腹の成長とともにゆっくり変化していったボディバランスが、出産された日を境に再び大きく変化してしまうことになるのです。
これを当院では「重心の揺り戻し」と呼ぶことにしました。
次に2については、子宮が大きく成長することで引き伸ばされてしまう骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)をはじめとする身体の最深部を支える筋肉群の機能低下の問題。
腹部を骨格に代わって物理的に支える筋肉の塊であり、これら筋肉群はインナーユニットとよばれ、体幹のまさに中枢部分を支える筋肉ともいえる存在とも言えます。
インナーユニットがきちんと機能すると「腹圧を高める」ことができ、全身の筋肉のパフォーマンスを跳ね上げることが可能になります。
また、強い力を出すだけでなく、姿勢を支えるという部分においてもインナーユニットは大きく関与していて、その機能の低下が多くの女性が出産後に大きく姿勢を崩してしまう原因のひとつとなっているのです。
出産後に腹圧を高めることが出来ないままだと
出産したら直ちに骨盤底筋(こつばんていきん)を締めましょう!
今や当たり前のように医療機関で聞くようになった骨盤底筋という筋肉の存在。
実は骨盤底筋が産後弛んだままだと尿もれを誘発するだけでなく、先述したインナーユニットの機能まで低下したままの状態となってしまい、思いがけない不調やトラブルの原因となってしまうのです。
特にお腹が大きく膨らんだ影響で、骨盤底筋群とならんで同じくインナーユニットを構成する腹横筋(ふくおうきん)とよばれるインナーマッスルの腹筋も大きなダメージを負ってしまいます。
そして、このふたつの筋肉が機能不全の状態にあるとインナーユニットが機能できない、つまりは「腹圧を高める」ことが出来ないままとなってしまうのです。
そうなると、腹直筋(ふくちょくきん)とよばれる本来大きな力を生み出すはずであるアウターマッスルの腹筋が大幅な出力低下を起こしてしまうことで腹筋運動(上体起こし)が困難となってしまうのです。
当院が産後ケア、産後の骨盤矯正で体幹バランスを重要視する理由
一般にインナーマッスルは動作を補助するように働き、それによってはじめてアウターマッスルが大きな出力を発揮できるように人間の体は出来ています。
しかし、身体の中枢部を支えるインナーユニットが正しく機能できない状態にあると、インナーマッスルが本来の能力を発揮出来なくなってしまうのです。
その理由は、多くのインナーマッスルが直接的、間接的にインナーユニットに連結していて、それによってインナーユニットから大きな力を受け取ることが出来る構造となっているから。
本来は必要に応じて「腹圧を高める」ことにより、大きな力を出せるように人間の体は出来ているのです。
出産後はインナーユニットが機能低下してしまうだけでなく、「重心の揺り戻し」によって一部のインナーマッスルがいわば「眠ったまま」の状態になってしまいます。
これが全身の筋肉のパフォーマンスを著しく下げてしまう原因となり、特定の筋肉に極端な負担を掛けてしまうことに繋がってしまうのです。
それは動作をする筋肉だけでなく、姿勢を支えるように働く筋肉にも同じく影響を与えることとなります。
持ち合わせている筋肉を果たして効率よく使えているかどうか?
これが最も端的に表れる動作が、腹筋運動(上体起こし)なのであり、「なぜ産後ケア、産後の骨盤矯正をするべきなのか?」という問いに対する明快な回答でもあると考えるのです。
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